これまでに4件の研究に参加してきました。加えて、私は定期的に献血も行っているため、関わってきた研究や医療貢献の機会はそれ以上になります。以下は、その体験談です。
By Darcy Grabenstein
臨床試験について日常的に執筆している立場として、そろそろ「言うだけでなく自ら実践すべき時」だと感じました。もっとも、試験内容によっては「口に出す」というより、「口に体温計を入れる」と言ったほうが正しいかもしれません。 そんな折、健康なボランティアを対象とした臨床試験の募集を告知するメールが、かかりつけの薬局から届きました。私は迷うことなくクリックしました。
これまでに4つの研究に参加してきました。さらに、定期的に献血を行っていることも含めれば、その数はもっと多くなります。ただし、私の体験を共有する前に、ひとつ注意点をお伝えしておく必要があります。 それは、臨床試験への参加を募る、見覚えのない連絡には慎重になるべきだということです。その一例が、私が別途受け取った「Findclinical」からのメールです。件名は「機密性の高い臨床試験への参加募集」。一見するともっともらしく感じられたため、私はメールを開きました。そこには、次のように書かれていました。
「最大3,000ドルまで」というオファーには、少し怪しさを感じました。よくよく確認してみると(幸い「Start Now」をクリックする前に・・・)メールの送信元がarkansashomeforsale.com であることに気づいたのです。当然ながら、これは危険信号でした。即削除。
そして、本物の薬局から届いたメールに戻りました。
Study #1: Intuition Brain Health
Biogenの「Intuition Brain Health」試験は、成人の認知機能の健康状態を測定する研究でした。Biogenのニュースリリースによると、この研究の目的は、「Apple WatchとiPhoneが、認知機能のパフォーマンス測定や、軽度認知障害(MCI)を含む認知機能低下のスクリーニングにどのように役立つかを検証すること」でした。研究期間は2021年9月20日から2023年9月19日まで。つまり、この試験の詳細を思い出そうとしている今この瞬間も、自分の認知機能が試されているようなものです。
この研究はリモート形式で行われ、自宅にいながら参加できました。科学の発展に貢献し、自身の知識を深められることも参加動機のひとつでしたが、実際にはもっと分かりやすい“特典”もありました。参加者には無料でApple Watchが提供され、毎日装着する必要があったのです。
さらに、そのApple Watchを最終的に自分のものとして保持するには、日々のタスクや季節ごとの課題をこなして一定数のポイントを獲得する必要がありました。貯めたポイントは、追加で260ドル分のギフトカード、または慈善団体への寄付に交換できました。
その他の参加条件は以下の通りでした。
- 21歳から86歳までであること(資料によって一部条件に違いあり)
- iPhone 8以降を所有し、使用していること
- Wi‑Fiまたは有線インターネット環境があること
- 有効なメールアドレスを持っていること
- 対応するコンピューター(MacまたはWindows)もしくはiPadを持っていること
- 米国在住であること
自分がこれらの適格条件(I/E criteria)をすべて満たしていると分かったとき、私はすぐに参加登録したくなりました。気づけばApple Watchが郵送で届き、Intuitionアプリをダウンロードし、参加準備は万端でした。
およそ3か月に一度、2週間にわたって、iPhone 上で短い「思考力」と「記憶力」に関するアクティビティを行いました。各アクティビティは約3分程度のもので、1日3回(朝・昼・夕方)実施する必要がありました。リマインダーは送られてきていたにもかかわらず、時には実施可能な時間帯を逃してしまうこともありました。それ自体が、私の記憶力、あるいはその不足を如実に物語っていたのかもしれません。
月に1回程度、所要時間が約30分とされているオンラインの思考力・記憶力テストにも取り組みました。そのうちの一つは、昔ながらの「神経衰弱」に似たマッチングテストでした(この例え自体が、私がこの研究の対象年齢に該当した理由を物語っています)。
ただし条件がありました。目の前の課題を完了しない限り、次のセクションに進むことはできないのです。画面には「このセクションの所要時間は約6分」と表示されていましたが、12分経っても私はまだ苦戦していました。 そのとき私は思わず首を振りながら、夫にこう言ったのを覚えています。 「将来、私は苦労することになりそうね。」 そして少し間を置いて、言い直しました。 「いや、違うわ。苦労するのはあなたね。だって、私の世話をするのはあなたなんだから!」
別のテストでは、ランダムに繰り返される画像が1枚ずつ、素早いテンポで表示されました。私の課題は、2つ前に表示された画像と同じものが出たときにタップすること。言うのは簡単ですが、実際にやってみるとかなり難しいものでした。 私はもともと負けず嫌いな性格なので、2年間にわたる研究期間を通じて、正答率や反応速度を少しでも向上させたいと思っていました。研究自体は下記のとおり予定より早く終了しましたが、私自身は、Apple Watch を保持できるだけのポイントを獲得した時点で参加を終えました。
研究終了後、私は結果が気になり、調べてみることにしました。ところが、ClinicalTrials.gov に掲載されていた本研究に関する情報は、次のような内容でした。
2023年9月に開催された DTx East では、Biogen の データ・イノベーション責任者である Abhishek Pratap 氏 と、認知・メンタルヘルスサイエンス部門責任者の Richard Hughes 氏 が、Intuition 試験の概要と初期の知見を紹介しました。そこでは、実世界における認知機能アウトカムを理解することの実現可能性が示されました。Hughes 氏はアップデートの中で、バイオマーカーによって認知症状が出現しつつある人を特定できたことを示すとともに、データから得られるさらなるインサイトを今後共有する予定であると述べました。
しかし 2024年9月、MobiHealthNews は、Biogen が同社のグローバル部門である Biogen Digital Health を閉鎖し、Apple との共同研究から撤退したことを確認したと報じました。Biogen の グローバル・コーポレートコミュニケーションおよびメディアリレーションズ担当シニアマネージャーである Dan Haro 氏 は、この研究の現状について把握していなかったとしています。同氏によると、研究結果や知見をまとめた論文(マニュスクリプト)は公開されなかったようで、その責任は Apple 側にあるとのことでした。
さらに 2025年3月 の pharmaphorum の記事では、本研究の結果として、iPhone や Apple Watch などのデバイスに搭載されたパッシブセンサーを、他の指標と組み合わせて活用することで、時間の経過に伴う思考力や記憶力の変化を把握でき、軽度認知障害(MCI)を示唆する可能性があることが示されたと報告されています。
試験②Smell Test Challenge
次に参加したリモート臨床試験の機会も、2024年4月、メールで届きました。その名も 「Smell Test Challenge(嗅覚テスト・チャレンジ)」。 そしてご想像のとおり、形式はいわゆる「スクラッチ&スニフ(こすって香りを嗅ぐ)」タイプのテストでした。私の副鼻腔は慢性的に詰まり気味なので、このテストを優秀な成績でクリアできるかどうかには、正直かなり懐疑的でした。
この研究は Parkinson’s Progression Markers Initiative(PPMI) と呼ばれ、マイケル・J・フォックス財団によって実施されています。パーキンソン病と診断されていない40歳以上の人(ただし、ここでも一部資料では条件が異なる記載がありました)であれば、誰でもこのテストに参加可能です。本研究は、パーキンソン病のリスクに関する理解を深め、新たな治療法の開発につなげることを目的としています。
嗅覚の低下は、パーキンソン病のリスクを示す最も重要な兆候のひとつと考えられています。オンラインで登録を済ませた後、研究キットが郵送で届いたときの私は、まるでクリスマスの朝の子どものように、封筒を勢いよく開けました。中に入っていたのは、小冊子と、スクラッチ&スニフ方式のテスト用ストリップ。 シナモン、レモン、ガソリン、石けん、玉ねぎ、リコリス、バナナといった、身近でおなじみの香りが並んでいました。
Image credit: Northwestern University
私の役割は、それぞれのストリップを軽くこすって香りを出し、ページに記載された4択の選択肢の中から正解を選ぶことでした。その集中ぶりといったら、まるで大学入学共通試験(SAT)を受けているかのようだったと思います。選択する前に、できるだけ多くの情報を捉えようと、私は毎回深く息を吸い込みました
今回は、個別の結果通知もきちんと届きました。朗報です。私の嗅覚は正常でした。もちろん、将来パーキンソン病と無縁でいられる保証があるわけではありません。ところで……私の老眼鏡、どこに置いたかご存じですか?
試験③:アクティブで年齢を感じさせないライフスタイル
ニュージャージー州のストックトン大学から届いたメールが、次の臨床試験の機会を知らせてくれました。今回はラボで実施される試験です。メールのバナー画像が、私の目を引きました。
興味をそそられた私は、この研究について問い合わせてみました。すると、ラボでのセッションには、脳波(EEG)の測定、性格特性の評価、そして思考力と記憶力に関する短いテストを2つ含むことが分かりました。謝礼は40ドル。移動時間、ラボでの滞在時間、そしてキャンパスまでの往復のガソリン代を考えると、正直なところ十分とは言えない金額です。それでも、私はやってみる気になりました。
2024年11月24日、私は大学内にある Healthy Brain Healthy Mind Research Lab に足を踏み入れ、ほどなくして、頭に何十個もの電極を取り付けられることになりました。
The author, a cross between a lab rat and Frankenstein
嗅覚テストとは異なり、この研究では次のように明記されていました。 「すべての結果は全体データとして報告され、個別のデータは開示されません。」 本研究は現在も継続中のようで、現時点ではまだ結果を目にしていません。
試験④歩道でのスワブ検査
2025年11月、私は学会出席のためボストンを訪れていました。その際、通りを歩いていて、思わず足を止めてしまうこの看板の前を通り過ぎました。
私は二度見したあと、結局その“誘い”に乗ることにしました――ええ、正確には「検査」にです。この研究を実施しているのは、独立系の非営利団体である SecureBio と、感染症の拡大を監視する同団体の Nucleic Acid Observatory(核酸観測所) です。 2024年、この観測所は Zephyr というプログラムを立ち上げ、人々が保有しているウイルスを鼻腔スワブによってモニタリングし始めました。目的は、地域社会におけるウイルスの動向を把握することです。
ただ、私は旅行者だったため、自分の参加が結果を多少なりとも歪めてしまうのではないか、という疑問は残りました。結果といえば、2025年12月時点のデータが以下に示されています。全体的なウイルス量という観点では、11月は比較的落ち着いていた時期だったようで、そのタイミングで現地にいたことを、少しほっとしながら振り返っています。
Source: SecureBio
The Boston Globe によると、SecureBio は 6か月間で約2万ドルのインセンティブを支払い、1万件のスワブ検体を収集したとのことです。私は 2ドルの謝礼を辞退しようとし、「純粋に医学研究の役に立ちたかっただけです」と説明しましたが、2人のスタッフはどうしても受け取ってほしい様子でした。こうして私は、新品の2ドル紙幣を受け取ることに。なかなかお目にかかれない、ちょっとした珍品です。
もっとも、作業自体は 自宅で行う COVID 検査のスワブと同じように、ほんの数秒で終わるものだったことを考えると、公正な対価だったとも言えるでしょう。総じて、私の臨床研究への参加経験は非常にポジティブなものでした。今後も、できれば引き続き健康なボランティアとして、臨床研究に参加できる機会を楽しみにしています。
Read more about the role of healthy volunteers in clinical research.
著者について
Darcy Grabenstein
コンテンツ戦略 & ソートリーダーシップ担当ディレクター、サイトライン
Darcyは、サイトラインでコンテンツ戦略およびソートリーダーシップ統括ディレクターです。ジャーナリズムをバックグラウンドに持ち、マーケティング、広告、広報の分野で30年以上の経験を有しています。
臨床試験への参加案内が正当なものかどうかは、どう見分ければよいですか?
突然届いたメールには注意が必要です。特に、高額な報酬をうたうものには警戒しましょう。リンクをクリックしたり個人情報を共有したりする前に、送信者、スポンサー、試験の詳細を必ず確認してください。
臨床試験には通常どのような参加条件がありますか?
参加条件は試験ごとに異なり、年齢範囲、居住地、必要なテクノロジーやアクセス環境などが含まれる場合があります。
臨床試験に参加した後、自身の試験結果を受け取ることはできますか?
必ずしも受け取れるとは限りません。個別のフィードバックが提供される試験もあれば、全体の結果のみが報告され、個人データは共有されないと明記されている場合もあります。


