

リアルワールドデータ(RWD)とリアルワールドエビデンス(RWE)の境界は、しばしば曖昧です。RWEは、RWDから臨床的な洞察や結論を導き出すための手段です。
私たちの日常生活の中では、特に医療に関連して、リアルワールドデータ(RWD)が絶えず生成されています。最近、ノーステラ(サイトラインの親会社)のRWD専門家3名が集まり、RWDと臨床研究におけるその役割について議論を交わしました。
リアルワールドデータ(RWD)とリアルワールドエビデンス(RWE)の境界は、しばしば曖昧です。ノーステラの医学科学担当バイスプレジデントであるShrinal Patel博士は、「この2つは密接に関係しており、明確に区別するのは難しい」と述べています。
「リアルワールドデータとは、ラボの検査値などの“生”のデータです。よくある誤解として、RWDはすでに整理されていて、すぐに使えると思われがちですが、実際は未加工の状態です。」
Patel博士は、診療記録、保険請求データ、検査結果などの未構造化データが、最も“生”の形式で存在していると説明します。ノーステラでは、こうしたデータのノイズを除去し、マッピング処理によって整理しています。そして、そこから得られる臨床的な洞察や結論が、リアルワールドエビデンス(RWE)となるのです。 RWDエンゲージメント担当バイスプレジデントのIlan Behm氏は、RWDを次のように捉えています。
「RWDとは、日常の医療体験の中で生成・収集される一連のデータポイントです。」
このような医療体験は、以下のような場面で発生します: 医師の診察 救急外来や入院 薬局での処方 ラボでの定期的な血液検査 自宅やジムでの運動中(ウェアラブルデバイスによるデータ収集)
Behm氏は、次の問いを投げかけます。「これらのデータはどのように収集され、何が記録されているのか?」
例えば、医師の診察では、身長・体重・血圧などのバイタル情報がカルテに記録されます。性別や生年月日などの基本情報も含まれるでしょう。
「Apple Watchのようなデバイスを装着していれば、心拍数や酸素濃度が数分ごとに記録されます。持続型血糖モニターであれば、血糖値が定期的に測定されます。」
これらのデータポイントは、個々の患者に関する詳細な情報を提供しますが、医療全体の傾向を示すものではありません。しかし、情報を集約・分析することで、さまざまなトレンドを把握でき、患者のアクセス向上というミッションの達成に貢献できるとBehm氏は述べています。
「RWDを活用する目的は、患者がその医療ジャーニーの中で、最適なタイミングで、最適な治療を受けられるようにすることです。」
このデータは、医療従事者が臨床試験や新しい治療法の対象となる患者を把握するためにも活用されます。

CitelineのSitetroveおよびTrialtroveのデータは、臨床試験のパフォーマンスを可視化します。 RWDエンゲージメント担当シニアディレクターのAlison Perry氏は、これらのデータを患者レベルの情報と紐づけることで、患者が臨床試験間をどのように移動しているかを把握できると説明しています。
その一例として、電子カルテ(EMR)を挙げています。EMRには、特定の疾患に対する治療に関する臨床試験情報が含まれており、患者がどの試験に参加しているか、あるいは競合試験に関与しているかなど、長期的な視点での理解が可能になります。
Ilan Behm氏(RWDエンゲージメント担当VP)は、CitelineのTrialtroveデータセットが、ノーステラのRWDデータセットと容易に連携できることを強調しています。
ノーステラの「NorstellaLinQ」は、リアルワールドデータと、CitelineおよびEvaluate、MMIT、Panalgo、The Dedham Groupといった姉妹ブランドが持つ独自のインテリジェンスを統合したプラットフォームです。
Behm氏は、Trialtroveで得られる差別化されたインサイトやデータポイントは、ClinicalTrials.govで提供されている情報をはるかに凌駕していると述べています。
「私たちは業界と連携しながら、適格な患者が臨床試験に参加できるよう支援しています。」

Alison Perry氏(RWDエンゲージメント担当シニアディレクター)は、ノーステラが保有するデータセットについて詳しく説明しました。このデータは、さまざまな医療システム、病院、保険者、医療保険プラン、決済クリアリングハウスなどから収集された情報を統合したものです。
Perry氏は続けて、これらすべてのデータセットは社内で管理されており、トークン化されているため、異なる情報源やシステムをまたいで、同一の患者を時系列で追跡することが可能であると述べました。
「私たちはプライバシーを保護しながら、患者の診断内容、治療内容、治療結果を、時間軸と医療機関を超えて把握できるようにしています。」
ノーステラのデータは匿名化されており、患者個人を特定することはできません。氏名や連絡先などの個人情報は一切含まれておらず、患者に直接連絡を取ることもできません。Perry氏はこの点を強調し、 「このデータは、個人を特定するためのものではなく、集団レベル、医療従事者レベル、医療機関レベルでのインサイトを得るためのものです」と述べています。
また、このデータは、疾患ステージ、治療パス、検査値、検査内容、治療結果など、さまざまな切り口で分析可能であり、 「表面的な分析にとどまらず、より深く、より豊かな情報を提供します」 と語っています。
さらに、標準化された診断情報のような構造化データに加え、Perry氏は診療記録などの非構造化データについても「非常に豊富な情報を含んでいる」と評価しています。ただし、こうしたデータは分析が難しいため、人工知能(AI)の活用が重要になります。
「AIを活用することで、なぜその治療が選ばれたのか、医師がどのように診断を下したのかといった“背景”を明らかにすることができます」

もちろん、リアルワールドデータ(RWD)には課題も存在します。 Shrinal Patel博士はその一つとして、患者を複数の医療機関やケア環境にわたって時系列で追跡することの難しさを挙げています。
「複数のデータソースがあるのは利点ですが、それらすべてを統合しても、患者の全体像や完全な治療ジャーニーを把握するのは簡単ではありません。」
Alison Perry氏もこの意見に同意し、RWDがどこに存在し、どのように活用できるのかを“つなぎ合わせる”ことの重要性を強調しています。
「私たちは皆、患者が治療にたどり着くまでの道のりをスムーズにするという共通のミッションを持っています。 私個人としては、リアルワールドデータには、まだ十分に認識されていない、あるいは今は注目されていない形で価値を提供できる大きな可能性があると考えています。 私たちは、まだその“表面”をなぞっている段階にすぎません。」
Perry氏はさらにこう続けます: 「私たちは業界の最前線にいると自負しています。単にデータを“投げ渡す”ようなことは決してしません。」
詳しくは、Citeline.comの「リアルワールドデータ ハブ」をご覧ください。