ペプチドおよびナノボディ複合体の臨床動向は急速に拡大しています。本記事では、対象疾患、作用機序、標的、地域別のトレンドといった観点から、臨床のランドスケープを考察します。
本内容は、サイトライン(Citeline)のPharmaprojectsデータおよびパイプライン分析に基づき、Citelineの臨床試験インテリジェンス担当アソシエイトディレクターであるLaurie Withingtonによって、Protein & Antibody Engineering Summit(PEGS)2026で発表された内容に基づいています。
次世代の標的治療薬は、より小型のスキャフォールドを基盤として構築されつつあります。PEGS 2026において、サイトラインのグローバルな医薬品パイプライン分析では、活発に開発が進められているペプチドおよびナノボディ薬物複合体が106件確認されました。この分野は依然として初期段階に集中しているものの、すでに承認済み製品が存在し、さらに年内に規制当局への申請が見込まれる後期開発段階の候補もまとまって登場しています。
ペプチドおよびナノボディ複合体の臨床動向は急速に拡大しています。ペプチド薬物複合体(PDC)は主にオンコロジー領域のパイプラインで進展しており、ナノボディ薬物複合体(NDC)は次世代の精密バイオ医薬品として台頭しつつありますが、その大半はまだ初期段階にあります。本稿では、対象疾患、作用機序、標的、地域別トレンドの観点から臨床ランドスケープを整理します。
PDCは多くの利点を背景に成長段階にあります。主な利点として、腫瘍浸透性の高さ、低い免疫原性、オフターゲット毒性の低減、改善された薬物動態(PK)、高い薬物搭載比、合成の柔軟性とスケーラビリティ、さらにはセラノスティクスへの応用可能性が挙げられます。また、製造が比較的容易でコスト効率が高い点も特徴です。一方で、免疫原性に関する課題やペイロードの早期放出といった問題も存在します。
同様に、NDCも大きな可能性を秘めています。優れた組織浸透性、低コストでの工業生産、多様な結合(コンジュゲーション)戦略、体内からの速やかなクリアランス、改善された薬物対抗体比(DAR)などがその利点です。しかし、大規模生産においては部位特異的コンジュゲーション技術がコスト高かつ難易度が高い可能性があることや、承認に向けた確立された経路が十分に整備されていない点が課題として挙げられます。
PDCとNDCの双方に共通する課題としては、薬物動態(PK)プロファイルの不十分さ、半減期の短さ、経口バイオアベイラビリティの低さが指摘されます。
初期段階に偏るパイプライン
2026年1月時点のPharmaprojectsデータに基づく分析によると、106件の複合体のうち約63%が前臨床段階にあり、約20%が第I相試験に位置しています。第II相または第III相に進んでいるのは約13%にとどまり、さらに約3%が承認申請前段階にあります。
これまでに承認に至ったペプチド薬物複合体(PDC)は3件存在します。具体的には、ソマトスタチン受容体陽性の消化管膵神経内分泌腫瘍(GEP-NETs)を対象としたペプチド・アイソトープ複合体であるLutathera、多発性骨髄腫向けの抗血管新生ペプチド・メルファラン複合体であるPepaxto(2024年に米国市場から撤退)、そして米国外で骨肉腫を対象に承認されているペプチド・リポソーム複合体Mepactがあります。
地理的動向とモダリティ
開発活動の約80%は中国と米国が占めており、英国およびベルギーがさらに19〜22%のプログラムに関与しています。全体ではPDCが82品目と大半を占め、中国が主導し、次いで米国、英国が続いています。一方、NDCは24品目と規模は小さいものの独立した領域を形成しており、中国が先行し、ベルギーおよび米国がこれに続いています。
臨床段階に目を向けると状況はやや異なり、第I相から承認段階に至るPDCの割合では米国が最大シェアを占めています。これは、前臨床研究から臨床開発への移行において米国がリードしていることを反映しています。
Peptide Drug Conjugates Global Status
Source: Pharmaprojects, January 2026
Nanobody Drug Conjugates Global Status
Source: Pharmaprojects, January 2026
Peptide Drug Conjugates Phase I–Pre-Registration
Source: Pharmaprojects, January 2026
Nanobody Drug Conjugates Phase I–III
Source: Pharmaprojects, January 2026
がん領域が中心、代謝疾患も台頭
両モダリティ全体において、オンコロジーが依然として圧倒的な中心的領域であり、これに肥満、変形性関節症、2型糖尿病、心血管疾患が続きます。第I相から承認申請前段階にある27件のPDCのうち、約4分の3がアンタゴニスト型複合体、約4分の1がアゴニスト型で構成されており、放射性核種やチューブリン阻害剤から、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、トポイソメラーゼ阻害剤に至るまで多様なペイロードが採用されています。
主要ながんターゲットとしては、神経内分泌腫瘍や乳がん/前立腺がんが挙げられます。一方、非がん領域では、2型糖尿病および肥満、成長障害、ドライアイ疾患が主要な適応症となっています。NDCは放射性核種ペイロードへの依存度が高く、大半の候補がPD-L1およびHER2を標的としています。
Source: Pharmaprojects, January 2026
Source: Pharmaprojects, January 2026
注目すべき開発候補
未承認のPDCのうち、最も開発が進んでいるのは7件で、18件のピボタル試験に支えられています。このうち3件は承認申請前段階にあり、いずれも年内の承認が見込まれています。具体的には、Hanmi Pharmaceuticalのefpeglenatide(2型糖尿病および肥満を対象とするexendin-4-IgG4 Fc複合体で、肥満適応で2026年の承認が見込まれる)、ITM Isotope Technologies Munich SEの177Lu-edotreotide(GEP-NETsを対象とし、PDUFA期日は2026年8月)、そしてEli Lillyのefsitora(2型糖尿病を対象とする単鎖インスリン変異体で、こちらも2026年の承認が期待されています)です。
これらに続くのが、第III相のANG1005およびbel-sar、第II相のurcosimod、第I相のfaridoxorubicinです。
パイプラインはどの段階にあり、承認に至ったものはあるか?
106件の複合体のうち、約63%が前臨床開発段階、約20%が第I相に位置しています。第II相または第III相に進んでいるのは約13%にとどまり、さらに約3%が承認申請前段階にあります。これまでに、3つのペプチド薬物複合体(PDC)が承認に到達しています。
開発は地理的にどこに集中しているか?
開発活動の約80%は中国と米国に集中しており、英国およびベルギーがさらに19〜22%のプログラムに関与しています。PDCは82品目と大部分を占め(中国、次いで米国、英国が主導)、NDCは24品目と比較的小規模なグループで、中国が先行し、ベルギーおよび米国が続いています。
主導している治療領域と開発品は何か?
両モダリティにおいて、オンコロジーが圧倒的な中心領域であり、これに肥満、変形性関節症、2型糖尿病、心血管疾患が続きます。未承認のPDCのうち7件が最も開発が進んでおり、18件のピボタル試験に支えられています。このうち3件は承認申請前段階にあり、2026年中の承認が見込まれています。


